「循環」ということを自覚的に考えるようになったのは、2001年のニューヨーク同時多発テロがきっかけでした。全世界を震撼させたあの事件は、単に遠くの突発的な悲劇などではなく、政治経済やエネルギー/循環などわたしたちの暮らしとも関わりあうなかで起きていた。
であるならば、自分たちの未来を誰かに委ねるのではなく、持続していける社会を自らの手で選んでいくためになにができるだろうか。その想いから2003年に環境に配慮したプロジェクトへのマイクロ・ファイナンス事業を展開する非営利団体<ap bank>を立ち上げました。2005年には音楽フェス<ap bank fes>をスタートさせ、その収益を有志や被災地ボランティア活動に充てることで、音楽を通して人々の想いが循環していく形を生み出すことができた。
そしてその傍ら、ap bankが持つサステナブルというコンセプトを実社会の経済のなかで実践していく場として2005年に<kurkku>が誕生します。(※注) 当時のエコブームなどにも後押しされ、kurkkuのオーガニック・レストランやプレオーガニックコットン事業などは都市型のビジネスとしてマーケットからも大きな評価を得ることができました。
しかし、2009年のリーマンショックを境に消費マインドは環境ではなくコストへと傾き、この国でも格差社会が顕現しはじめます。そして2011年には東日本大震災と福島第一原発事故によって、わたしたちは命のあり方そのものまでを問われることになります。
ひとの営みの足元まで降りていき、そのうえで広く世界とつながる豊かな循環を生んでいくにはどうすればよいのか。
その大きな難題に対するひとつの答えが、被災地支援の一環として行われる総合祭<Reborn-Art Festival(リボーンアートフェスティバル)>でした。大きな被害を受けた宮城県石巻市/牡鹿半島を、アート/音楽/食の祭典によって、地元の方々とともに内側から作り上げていこうという試みです。
そしてもうひとつの答えがこの<KURKKU FIELDS>なのです。2010年から、すべての根幹である一次産業/有機農業をこの地で立ち上げ、そこにさまざまな人が枝葉のように宿り幅広いクリエイティヴの場として育ってきました。
新しく生まれたこの2つのプロジェクトのコンセプトはともに” いのちのてざわり ”です。
” 生きる ”ということの本質的な部分を、アートを中心に表現したのが<Reborn-Art Festival>であるならば、食べるということを中心として本質的な喜びを提供する場所がこの<KURKKU FIELDS>なのです。ここではさまざまな食のプロジェクトが生き生きとしたアートのようにみなさまを迎えてくれることでしょう。
<kurkku>という実践をはじめて早13年が経ちます。この<KURKKU FIELDS>はこれまでの数多くの活動を経てたどり着いたひとつの集大成だと感じています。サステナブルな未来の形を、いのちのてざわりを、ぜひここで実際に体験してみてください。
※注 kurkkuとap bankはコンセプトを一にするのみであり、運営等における資金においては一切関係はありません。