
11月2日(土)、3日(日)、4日(月・祝)の3日間にわたり開催されたKURKKU FIELDSの5周年イベント「able For The Future」。多様な分野で活動する出店者の皆さまが「未来のために自分ができること」を胸に集まりました。彼らがそれぞれの活動のなかで実践している「私のable」とは。本レポートでは、出店者ひとりひとりの未来への想いと、それらを形にするための挑戦についてお聞きした声をまとめました。それぞれのストーリーに触れることで、あなたにとっての未来への一歩が見つかるきっかけになるかもしれません。
「able For The Future」アフターレポートはこちらから
「able For The Future」= 「未来のためにあなたができること」

パタゴニア プロビジョンズ
「遊び続けること。遊びのなかで、自分や社会の課題、新しいアイディアが生まれます。」

Overview Coffee Ichinomiya
「僕らのテーマは、コーヒー一杯を通じて環境負荷を減らすこと。リジェネラティブ農業によって育てられたコーヒー豆を購入することで農法を支援し、店舗運営ではゼロウェイストを目指すなど、環境に配慮した取り組みを行っています。【リジェネラティブオーガニック】という言葉は、多くの方にはまだ馴染みがない概念かもしれませんが、親和性のあるコミュニティと協力しながら出店し、この考え方を少しずつ広めていきたいと考えています。といっても単純に、『コーヒーが美味しい』と言っていただけることも嬉しいので、何気なく飲む一杯のコーヒーが、自然環境への負担を軽減するきっかけに繋がれば幸いです。」

CIRTY
「都市に居ながらできるサステナブルな取り組みの選択肢を増やしていくこと。」

LOVEG
「大豆生産者の想いと食べてくれる方の笑顔を繋げるために、最近工場を作りました。オーガニック栽培は、育てる人、食べる人、そして地球環境にも優しい持続可能な農法です。袋詰め作業は就労支援施設と協力して行うことで福祉連携を実現し、自分たちだけで完結しない仕組みにしています。大豆を育てる生産者さんの健康や土壌改善、環境への配慮を考えながら、国産オーガニック大豆のおいしさをもっと多くの人に伝えていきたいです。」

KIMINO
「KIMINOは、【あなたのために】という想いからスタートした飲料メーカー。美味しいものは人種や言語、立場を超えて、共感できる仲間を増やしていきます。美味しい未来こそ、平和で優しい世界です。そんな未来に貢献していきたいです。」

苗目
「子どもたちが遊べる公園をたくさん作っていこうと思っています。」

鮨 てんもく
「【丁寧な仕事をし続ける】こと。僕らはお寿司を通して、生産者さんのリアルな声を消費者に伝えていきたいです。自然な方法で作られた食材は品質が統一されないため、それぞれの食材に適した処理を行うことで、フードロスにも繋がっていくと思っています。」

Casse-tête
「フードロスに取り組み、環境負荷のかからないものを使ったパン作りをしています。」

草 so
畑中亨さん(写真左):「耕すこと。僕らは棚田のある中山間地域に住みながら、周りに増え続ける耕作放棄地を引き受けて稲作を行っています。これからもそういった場所をできる限り耕し続けることで、先人から引き継いだものを次世代に残していきたいと思っています。」
畑中美亜子さん(写真右):「楽しむこと。未来への大きなスパンではなくても、目の前のことを楽しみ、面白さを発見していくと上手く回っていくと感じるんです。農作業でも家事でも、一つ一つに丁寧に向き合うことが未来に繋がっていく、そんな気持ちで日々暮らしています。」

MIFUNEYAMA COFFEE
「ただコーヒーを提供するだけでなく、自分たちで作れるものはなるべく自分たちの手で作っていこうと思っています。最近、三舟山の近くに古民家と畑を購入したので、来年からはスタッフみんなで野菜やお米を育てる予定です。スタッフの家族や子どもたちに、食べ物がどのように作られるのかを伝え、次の世代にも受け継がれるような場所にしていきたいと考えています。気候変動の影響でコーヒーチェリーの生産も厳しくなり、需要と供給のバランスが崩れる懸念もある中、僕らも生産者の視点に立った商いが重要だと感じています。国内でコーヒー豆を生産することは難しいですが、海外の農園と提携する話も進めつつ、今できることを丁寧に取り組みながら持続可能な未来に貢献していきたいと思っています。」

シーベジタブル
「海藻を美味しく食べてもらうことで海の現状を知ってもらうきっかけを作りたいです。」

オイシックス・ラ・大地
「オイシックス・ラ・大地は、オイシックス、ラディッシュボーヤ、大地を守る会の3社が6年前に統合して生まれたブランドです。元々は良きライバル関係にあった会社同士ですが、作り手の皆さんが取り組む環境保全型農業や、それらの素材を活かした加工品づくり、伝統的な製法を守るという理念は、3ブランド全てに共通していました。私たちは、作り手の想いやストーリーをお客様に伝え、環境や社会に配慮した選択肢として商品を提案しています。こうした商品を選んでいただくことが、作り手の持続可能な活動に繋がり、環境保全や次世代へ続く作り方や味を生み出すと考えています。一人でも多くのお客様に『美味しい』と思っていただくことが、私たちにできることだと思います。」

SOLSO FARM
「僕らのマニュフェストは【KEEP GREEN】。植物を植えることで、僕らが生きている未来だけではなく、その先の未来にも緑を残していきたいと思っています。」

Bee’s work
「抗生物質を使わず、自然に寄り添った養蜂を続ける自然養蜂家の方々と出会う中で、使われなくなった巣が活用されず廃棄される現状に疑問を感じました。高品質なミツロウを再生し、買い取る仕組みを作れば、自然と経済の循環を生み出せると考えています。自然界ではミツバチが減少し、セイヨウミツバチも農薬の影響で命を落とすなど、様々な生き物が厳しい状況に置かれています。こうした小さな生き物たちが存在するおかげで私たちの生活が成り立っているという事実は、なかなか実感しにくいものですが、ミツロウの活動を通じて、このつながりを伝えていきたいと考えています。私たちの代で全てを成し遂げることは難しくても、長い時間をかけて自然とのつながりを取り戻す努力を続けていきたい。小さな取り組みでも、同じ思いを持つ人たちが集まることで、やがて大きな変化を生み出すはずです。気持ちの良い自然環境を未来に残せるよう、一歩一歩前進していきたいです。」

FUSABUSA
「商品づくりにおいて一貫して大切にしているのは、何世代も先を見据えた日々の食の選択を提供すること。持続可能で再生可能な食材や生産者とつながりながら商品を作り続けることで、【買う】という行為が、誰に、どこに、どのような影響を与え、どんな背景があるのかを考えるきっかけになってほしいと願っています。そうすることで、選ぶことや食べることが、消費者にとっての【生産】へと繋がっていくと信じています。」

うつわ熾OKI
「全国の作り手たちが紡いできた想いや技を絶やさず受け継ぎ、その背景にある価値が多くの人に伝わることで、新たに器作りを始める作家さんたちも未来へ歩み続けられると信じています。器は料理の引き立て役ではなく、主役。食やものづくりに関することだけでなく、地球や環境問題など、さまざまな物事が器を通じて繋がり、手に取った方がそれぞれの未来を考えるきっかけになればと思っています。」

うやま工房
「地主の高齢化により竹藪は荒れ、活動の半分以上を薮掃除に費やしている状況です。竹は2〜3年前に生えたものを使うため、うちわができるまでには時間がかかり、一本のうちわを作るためには、100本の綺麗な竹を育てる労力が必要です。私たちが未来のためにできることは、まず山に適切な手を加え、良い竹が育つ環境を作ること。この手入れを続けることで、持続可能な竹の生産を支え、未来へ竹文化を守っていきたいと思います。」

N.E.W.S PROJECT
「N.E.W.S PROJECTは、生産者や作り手をつなぐ架け橋となるプロジェクトです。僕らの役割は、生産現場の声を発信し、その情報を多くの人々に届けること。表面に見えるものだけでなく、生産者の困りごとを吸い上げたり、生活の糧に変えるお手伝いをすることで、彼らの仕事や生活を支援し、生産を応援したいと思っています。まだ始まったばかりのプロジェクトですが、これから長く続けていき、生産者が抱える課題にさらに深く向き合い、継続的にサポートしていきたいと思っています。」

シシノメラボ
「シシノメラボは革職人が集まって始めましたが、これは里山の循環の一部に過ぎません。世の中のさまざまな要素全てと繋がり合っていかないと意味がない。今回シャルキュトリーのすぐそばで出店させていただき、そこで食べたお肉や食材がどのように革と繋がっているのかを伝えることができたのは非常に貴重な体験でした。食と革が自然に結びつく場所での出店は、僕らの活動と親和性が高く、非常に有意義な時間だったと思います。」

1分おむすび
「僕はできるだけ地球の力を借りて生きていきたいんです。朝に太陽が昇り、夜には沈むように、僕らは太陽のエネルギーを受けて動くことができる生き物。僕はお米を作り、おむすびを売っていますが、農業の魅力を若い世代に繋げ、次の世代に担い手を増やす仕組みを作りたいと考えています。農業の作業をロボットに任せるなど、使われているようで使われていないエネルギーを上手く活用し、テクノロジーの進化と共に生きることで地球に優しい生活ができるはずです。」

TATEYAMA GIN
「普段使われないようなものや捨てられてしまうようなものを再利用して、お酒の材料として使っています。」

橘茶寮
橘 雄介さん(写真左):「食材の端を加工して賄いに使うなど、フードロスを出さないように徹底しています。」

kaori emori
「ライ麦の種から育て、自然の恵みをいただきながらヒンメリを作っています。ヒンメリは目で楽しむものですが、制作過程を通じて、土から受け取った恵みを手や目で感じることができるので、人間も植物と同じく自然の一部であることを感じてもらえるかと思います。その行為が地球を良くするきっかけのひとつになると信じて活動を続けています。」

JUNSE KIMPPA
「お店を始めたきっかけは、子どもが体が弱く、食材にこだわっていたから。10年前はスーパーで手に入らないものが多く、全てネットで取り寄せていました。有機野菜を作る生産者の存在が本当に有難く、なんとか生産を続けてほしいという思いが強くありました。
私は、キンパを売るというより、食材そのものを届ける感覚に近いんです。頑張っている生産者の代わりに営業し、彼らの食材の魅力を伝えたいという気持ちでお店をやっています。一人で使える量には限りがありますが、お店を通じてたくさんの食材を使えば、生産者の収入にも繋がり、農業が持続していくと信じています。また、料理教室も開いているのですが、子どもの食事に悩むお母さんも多いので、自然や有機食材に触れてもらい、食べることを楽しめるような場を作ることで、生産者と消費者を繋いでいきたいと思っています。」

Jeera & Dhania
「東京から千葉に移住し、古民家を自分たちの手で直しながら暮らしています。地元で採れる新鮮な野菜や旬の食材を使って料理をする楽しみは、都会ではなかなか味わえない喜びです。地域に根ざした新しい暮らしの形を模索しながら日々を過ごしています。」

さかなとおでん うおべぇ
「今ある資源を未来へ繋げていくこと。うおべぇではできる限り地域の食材を使うことを心がけています。今回提供したおでんには、木更津市の食材をメインに使用し、KURKKKU FIELDSの卵、平野養豚場の豚肉、そして出汁にはイボキサゴを取り入れました。イボキサゴは元々木更津の貴重な資源でしたが、今では廃棄されているという現状があります。僕らは、こういった地域の資源を活用することで、地域が未来でも生き続けられるような取り組みを続けていきたいと思っています。」
それぞれの“able”が紡ぐ未来

本イベントにて、出店者の皆さまの想いがひとつの場に集い、未来の“able”への想いを参加者の皆さまと分かち合う機会となったことを、心より嬉しく感じております。環境、食、地域との繋がりといった多様なテーマが交差するなかで、出店者それぞれが語る“able”は、身の回りから始まる実践であり、それを未来へどのように繋いでいくかを模索し続ける姿勢がとても印象的でした。
KURKKU FIELDSは、これまでも多様な価値観を持つ協力者の皆さまと手を取り合い、ポジティブな未来を創るための挑戦を続けてまいりましたが、本イベントを通して、異なる価値観や実践が交わり、新たな気づきや行動の連鎖が生れる力の大きさを、改めて強く実感しております。一人ひとりの取り組みや歩みは異なりますが、それぞれの“able”が繋がり合うことで、次世代へと希望を紡ぐ未来を描くことができる。私たち一人ひとりの選択や行動の中に持続可能な未来は息づいているのだと思います。
この3日間を共にしてくださった参加者の皆さま、そして場を共に作り上げてくださった出店者の皆さまに、心より感謝申し上げます。私たちはこれからも、持続可能な未来を形にしていくために、“able”を重ねてまいります。共に、一歩ずつ進んでまいりましょう。
写真:柳詰有香、益田絵里