感性くすぐる品々
UPDATE 2025.7.31
養鶏担当の松村です。
私事ですが、先日、某美術館に行ってきました。
そこには、シンプルだけど複雑な絵がたくさん展示されてました。抽象画と呼ばれる類のようで、よくわからないけれど「なんかいいなー」と、ただただ魅了され、そして圧倒されました。言語化できない「なんかいいなー」を人種問わず心に訴求できる作品は、意図して作られているのか、否か、謎でした。
しかし、その抽象画の数々を、見たときに感じた感覚を、意図して料理を作り続けるシェフが KURKKUFIELDS にはいます。
僕が尊敬してやまない宮城シェフです。
シンプルだけれど『味わいは複雑に』『感じ方は自然に』」を意識しているという料理には日々とても感銘を受けています。
例えば『チブレオ』
日本語で解釈すると、内臓炒め。
鶏の内臓部位を使用しており、砂肝、レバハツ、キンカン、卵管、それぞれの火の入るタイミングを考慮し、火力や炒める順番を見極め、最後にすべてまとめるために卵黄でとろみをつける。素材の食感をしっかり感じつつ、複雑な味わいになっており、異彩放つ一品です。
内臓は下処理や調理工程などを考慮すると、調理するのに大変手間のかかる素材です。ホルモンの語源は「放るもん」という説もあるくらいで、廃棄されることも多いですが、この料理は命を余すことなくいただくことを、感性に訴えかけられるような気がします。

最も感動した『慈鶏(じどり)』
ササミの糠漬けという創作鶏肉料理で、鶏の食べている餌でもある米糠を料理に組み込むというアイディアは、生産現場を良く知るシェフらしさを前面に感じます。
添えられているのは蝋梅の花で、メニュー名もその花言葉である “慈しみ” からとっています。
そして細長い葉は、ストリドーロというイタリア原産の野菜。僕にはこれが鶏の羽に見えて、生き物への供養にも感じました。料理を前にそんな風に感じたのは初めてのことで、いろいろな立場でいろいろな解釈ができるアート作品のような料理にとても魅了されました。
現在はこの料理がベースとなったメニューが perus で提供されています。季節に応じて内容が移り変わっていくので、四季の一期一会を楽しんでもらえたら幸いです。


ユニークさ No.1 『キミはフェイジョア』
みなさんは『フェイジョア』という果物をご存じでしょうか。シェフはそんな珍しい果物自身に「君はフェイジョアって名前だよ」と語り掛けるようなユニークな方で、それが表現されているメニュー名も思わずクスっと笑ってしまいます。卵が置いてある鶏舎床をイメージしてクッキーを散らしているという発想がまた面白く、隅々にまで遊び心が感じられます。

前職パティシエ !? 『卵白カスタードプリン』
パティシエ経歴もあるシェフはスイーツを作ることもあります。写真は余った卵白で作ったカスタードクリームをプリンの上に乗せて、さらに生クリームを流し込んだ創作スイーツ。
目玉焼きのような見た目で「今回は醤油を垂らしました」と言われても信じそうになりますが、色味が似ているチョコレートソースでいただきます。

僕の要望に応えてくれた『採卵鶏のとり玉チーズリゾット』
シェフへの初めての要望は、卵と鶏肉をひとつのプレートで一緒に使ってもらいたいというお願いでした。それを形にしていただいたのがこの料理で、歯ごたえある採卵鶏を農場野菜と一緒に2時間以上煮込み、完成したリゾットの上に乗っているのがその日に採れた卵です。
期間限定のメニューでしたが、終了後すぐに復活してほしいとお声をいただくほどの人気ぶりで、メニュー名までも僕の希望を採用していただいた思い出深い料理です。

今回ご紹介したものは、過去にイベントや期間限定で提供されていたメニューです。現在は食べることはできないのですが、うれしいお知らせもさせてください。
8月9日(土)〜 8月17日(日)に「にわとりフェア」を再び開催する運びとなりました。
KURKKU FIELDS における養鶏に関連する体験は、感染症のリスクを減らすため夏シーズンに行っています。そのため4月に行われた第1回のにわとりフェアでは、鶏舎の見学などができなかったのですが、今回は間近で餌やり体験などができるタイミングでの開催になります。
体験を通じて鶏とふれあい、彼女たちからいただいた卵やお肉を使用した料理を食す。そこから養鶏(鶏を育て、その命の恵みをいただくこと)を実感していただけたら幸いです。
また、今回紹介した料理の数々に関連というわけでもないのですが、宮城シェフ×松村で、ちょっぴり食体験を開催予定です。乞うご期待!
神出鬼没ですが、KURKKUFIELDS でみなさんにお会いできることを楽しみにしております!
ちなみにトップの写真は『鶏の滋味な味わいの汁』
2024年度に開催された『生きる力を養う学校』の一環『土と食す』にて提供されたスープ料理です。イベントの中で参加者のみなさまには、鶏がお肉になり、料理になっていく瞬間に立ち会っていただきました。

1994年生まれ。東京都府中市出身。20歳の時に旅したインドで鶏に関心を持ち、大学卒業後、北海道生活に浸りながら養鶏業に携わる。都内の実家で10ヶ月間、鶏(雄雌)との共同生活を経て、2022年2月に株式会社耕すに入社。現在も鶏に取り憑かれながら、循環をテーマにした美味しい卵をお客様にお届けできるよう、日々研究中。