場を整え、人を支える 選び直した生き方 地元で見つけた新しい役割
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朝、場内を一周しながら草の伸び具合を確かめ、設備に異常がないかを見て回る。草刈り、設備管理、清掃、動線づくり。KURKKU FIELDSを訪れた人が気持ちよく過ごせるように、そして働く人たちが動きやすいように、目立たないところをひとつずつ整えていく人たちがいる。
そんな役割を担うのが、2025年1月に施設管理部へ入社した川名さん。
仕事の内容は多岐にわたるが、その根底にあるのは、この場所で過ごす人や働く人が安心して過ごせる環境をつくること。華やかに見える仕事ではないけれど、場を支えるうえで欠かせない役割だ。

そんな川名さんがこの仕事にたどり着くまでには、自身の生き方を大きく見直す出来事があった。40代後半で潰瘍性大腸炎と肺炎を同時に患い、人生を見つめ直すきっかけになったという。
「このまま同じ生き方は続けられないと思ったんです。」
それまで勤めていた工場での役職を降り、しばらくできていなかった音楽活動を再開。さらに、体の回復のために自宅で自然農法にも取り組み始めた。自然の中で体を動かし、音楽を奏でる。健康な老後が当たり前にあるとは限らないと気づいたとき、自分にとって音楽が人生に関わるほど大切なものだったのだと、知ることができたという。
自分の気持ちに素直に生きることが、少しずつ体と心を回復させ、生きる力を取り戻すことにつながっていった。

その後、地元のファーマーズマーケットに関わり、耕作放棄地を活用した畑仕事を経験した。作業を続けるなかで、自身に農薬アレルギーがあることがわかり、農薬を使った農業をこの先長く続けていくことの難しさを感じたという。
生き方を変えようと始めた農業だった。楽しく、学びもあった一方で、自分にとって無理のない形で続けていく道を探す中で、周囲からも背中を押され、有機栽培という新たな道へと意識が向かっていった。そうして辿り着いたのが、KURRKKU FIELDSだった。
畑を歩くと、甘い匂いがした。お昼ご飯に猪バーガーをひと口かじった瞬間、衝撃が走ったという。猪肉だけではなく、挟まれている野菜も、パンも、すべてがおいしい。
「あのとき、この場所は本物だと思いました。」
川名さんにとって、農があり、食があり、アートがあるこの場所との出会いは大きかった。人の手でつくられ、自然と向き合い、誰かに手渡されていく営みが、ここには確かにあったという。
「どれか一つじゃなくて、全部に興味があったんです。」
だけど未経験。しかも、この年齢からの挑戦だった。草刈り機の使い方もわからない。
「正直、不安はありました。でも、やる気だけはあって。」
体を動かし、土に触れ、人と関わりながら、場を支える。人前で目立つ仕事ではないけれど、これまでに培ってきた感覚や経験が、静かに活かされていく。
「若い人たちが安心して挑戦できる土台をつくるのが、自分の役割だと思ってます。」
施設管理に所属するのは、庭師の宮澤さん、現場監督の経験を持つ山本さん。専門性の高い先輩たちが、根気よく教えてくれた。草刈りや塩素測定、一緒に機械の扱いを覚え、何度も触って体に覚えさせる。
「素人でも、諦めなければちゃんとできるようになる。」
そう思えたのは、仲間に恵まれていたからだった。

施設管理としてやっていることは、場内全体が整えられ、円滑に回ること。他のチームと連携しながら、それぞれのスタッフが本来の仕事に集中できる環境を整える。
丸太のステップや階段は、現場の声から生まれたものだ。雨の日に靴が汚れないように。子どもたちが遊べるように。実用性と楽しさの両立を意識してつくられた。
「こうするといいかな」「ああするといいかな」と、場内がより良い空間になるように、気持ちよさや使いやすさを考えながらつくっていく。
「2人でやると、2人分以上の仕事ができる。それがチームワークなんですよ。」
以前働いていた工場では、組織が大きく揺れる過渡期を経験した。二代目から三代目へと体制が変わる中で、古株と新人が衝突し、現場が混乱する。そのなかで川名さんは、人と人の間に入り、流れを整える役割を担ってきた。
さらにその前の介護職は、限られた時間と人手の中で、命に関わる判断を求められる現場だった。その他、夜明けまでに終わらせなければならない工事や、緊張感の高いチーム作業も数多く経験してきた。
同じ人数、同じ時間でも、動き方が変われば、できることは大きく変わる。それぞれの個性や得意なことを活かし、使うべきところに時間と人を配置する。そうすれば、足し算ではなく、掛け算のように仕事が進んでいく。
施設管理の作業の効率化も最近進んできた。コンポストづくりの時間は、以前の4分の1に。
「『早く終わらせて、もっと面白いことをやろう』が僕らの合い言葉です。」

今挑戦しているのは、人と人が自然につながる環境づくり。古民家を活用したシェアハウスや、アート制作ができるコミュニティづくりも、その一つ。困ったときに助け合える関係性や、経済だけに頼らない循環を、少しずつ育んでいきたいと考えている。
その実践として、最近は古民家を改装しながら、地元マーケットのボランティアスタッフや、美術館の枝払い、落ち葉掃除など、地域の活動にも積極的に関わる。
「働くことって、本来は楽しくて創造的なものだと思うんです。」
工場で働いていた頃は、夜勤や残業を重ね、中間管理職として上司と部下の調整役を担うなかで、自分を押し殺して他人に合わせることが当たり前になっていたという。
けれど、音楽を再開し、自然の中で体を動かし、自分の気持ちに素直に生きることで、少しずつ心身を取り戻していった経験があるからこそ、いまは“その人がその人らしくいられること”の大切さを強く感じている。
「自然の生き物たちがありのままの姿で美しいように、その人らしい個性が発揮され、活き活きとしている時が、いちばん美しいと思っています。」

働く人が幸せであれば、その空気は場に広がり、訪れた人も持ち帰っていく。だから、まずは自分たちが楽しく働く。
そうした思いは、地域との関わり方にも表れている。イベントのチラシは、ローカルな店を一軒ずつ回って配るという。口コミが今も生きているこの土地では、「あの人が言っていたから」という信頼が、何より強い。
「特殊な技術がなくても、歳を重ねていてもできることは必ずあるんです。どんな人にも役割はあるんですよ。」
場を整えることも、人が自然につながるきっかけをつくることも、川名さんにとっては同じ営みの延長線上にある。それぞれの土地で人が気持ちよく過ごし、無理なく関わり合い、それぞれがその人らしくいられる時間と空間を育てていくこと。
川名さんは今日も、自分にできるやり方で、その土台を静かに整えている。
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