関係のはじまりの場所から 手渡すように、想いをつなぐ
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KURKKU FIELDSを訪れた人が最初に出会う場所・インフォメーション。
場内案内の窓口でありながら、そこにはよく笑い声が響いている。ここは、場内を案内するだけでなく、人とKURKKU FIELDSとの関係が始まっていく場所でもある。
そんな役割を担っているのが、白井さんだ。

ファッションスタイリストを目指して、千葉・富津市から上京。けれど、働くうちに大量消費への違和感や環境問題への疑問が少しずつ積み重なり、さらにコロナ禍で強制的に立ち止まる時間を持ったことで、自分の価値観が大きく揺らいだという。
「このまま東京で働き続けるより、一度地元に戻って、自分が何を大事にしたいのか見つめ直したいと思ったんです。」
そうして地元に戻って間もなく、母から教えられたのがKURKKU FIELDSだった。初めて訪れたときに広がっていたのは、自然とともに生きながら循環をつくる、これまでに見たことのない風景だった。
「まさか地元に、こんな先進的な取り組みをしている場所があるなんて」。
その驚きと共感が背中を押し、入社を決めたという。
入社後1、2年は、ピザづくり体験のサポートや校外学習の補助など、現場のさまざまな仕事を経験した。多くの人の前に立つ場面もあったが、彼女がより得意だと感じたのは、“目の前のひとりとしっかり向き合う”コミュニケーションだった。

「インフォメーションは、最初にお客様と出会う場所。KURKKU FIELDSの入口として、ここから関係が始まるので、丁寧に届けたいです。」
情報を集め、整理し、伝えること。そうした仕事が自分に向いていると感じるのは、自身が“気になったことを深掘りして調べることが好き”だからだという。担当者に直接話を聞き、来客スケジュールや視察対応も含めて全体を把握しながら、ひとつひとつ準備を整えていく。
そうした丁寧な積み重ねがあるからこそ、お客様を安心して迎えることができる。
気づけば少し話して、笑って帰っていく常連さんもいる。そんな時間のあとに、「また来るよ」「楽しかったよ」と声をかけられる瞬間が、やはり嬉しいのだという。
「シンプルですけど、満足してもらえたことが一番わかるんですね。」
訪れた人が最初に出会う場所だからこそ、パンフレットや説明文に書かれた知識だけでは届きにくい。白井さんが大切にしているのは、“まず自分が体験すること”だ。足で使って、肌で感じて、迷ったり、驚いたり、感動したり。その実感をまるごと渡したいという。
最近、他のチームと一緒に取り組んだ小さな出来事があった。松ぼっくりや木の実を使った飾りを、インフォメーション前に置いてみないかと声をかけられたことがきっかけだった。
「お客様によりイメージを持ってもらえるように、せっかくなら置いたほうがいいね、という話になって。ポップを自分でつくって、場所も考えて、出してみたんです。」
すると、お客様からの反応がすぐに返ってきた。足を止め、手に取り、そこから会話が生まれていく。自分たちで考えて動いたことで、人の行動が変わったのを目の前で見られたことが、とても嬉しかったという。
インフォメーションの仕事は、決まった業務をこなす場面も多い。だからこそ、自分から一歩踏み出して生まれた変化は、より強く届く実感として残った。

白井さんが大切にしている“手渡すように伝えること”は、仕事だけでなく、休日の過ごし方にもつながっている。
休みの日は、美術館や展示会、映画上映会へ足を運ぶ。なかでも強く惹かれるのは、戦争や歴史にまつわるテーマ。古書街で資料を探したり、自ら小さな上映会を開いたりしながら、語り継ぐことの意味を考え続けている。
「戦争や平和のことは、一生考え続けていきたいテーマなんです。」
祖父母の世代が生きた時代は、まだ手を伸ばせば触れられる距離にある。もちろん同じ体験はできないけれど、映画や対話を通して、その記憶に少しでも近づくことはできる。
記憶が薄れていくことへの危機感が、彼女を動かしている。語り継ぐことは特別な活動ではなく、誰かにそっと手渡していく行為でもある。その姿勢は、KURKKU FIELDSでお客様と向き合うあり方とも、重なっているように感じる。
これまでにも身近な人たちを集めて、小さな上映会を開いてきた。何を上映するか当日の朝まで迷いながらも、“これなら初めての人にも届くかもしれない”と考えて選んだ一本が、次の対話につながっていった。
自然の循環を伝えることも、平和や記憶を伝えることも、いまここにあるものを大切にしながら、次へと手渡していく営みで、彼女が伝えたいのは、誰かの心に静かに残り、その先へとつながっていく温度なのかもしれない。

「木更津に、小さなコミュニティをつくりたいなと思っているんです。」
かつてこの街には4つの映画館があり、人が足を運び、同じ時間を過ごす風景があったという。好きな映画と本とコーヒーがあって、人が自然と集まってくる場所。そんな風景を、いまの木更津にももう一度つくれたらと思っている。
「今ここにあるもので、私はちゃんと満たされるんだって感じています。何者かにならなくてもいい。まずは自分を否定しないことが大事なんです。」
目の前の景色や、周りにいてくれる人たちのありがたさ。そうしたものに目を向けることが、彼女にとって少しずつ日々を支えるものになっていった。言葉を交わし、その人の感じ方に触れること。
その実感は、インフォメーションでお客様と交わす何気ない会話のなかにも息づいている。日々続けてきたそのやりとりのなかで、実は自分自身も救われていたのだと、あらためて気づいたという。
誰かと交わす一言。上映会で手渡す一本の映画。目の前の人と向き合い、手の届く範囲で想いや記憶を次へと手渡していくこと。地元に戻って彼女が見つけたのは、大きな肩書きではなく、土地に寄り添いながら、想いをつないでいく自分なりの役割だった。
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