出会いの場 学びの場
UPDATE 2024.11.30
こんにちは。地中図書館 館長の山名です。
地中図書館には約3400冊の本が並んでいますが、お客様からは「どのようにして本を選んだのですか?」というご質問をよく受けます。これまでにも何度かご紹介をしているのでご存じの方も多いでしょうが、地中図書館に配架する本は、選書家の川上洋平(かわかみようへい)さんに選んでいただいています。
川上さんは「本の魅力を深く見つめることから、人と本の新しい出会いをつくる」という思いを掲げる『book pick orchestra』の代表で、普段はさまざまな場所に合わせて『本のある空間の提案』や、一人ひとりとお話しをして、今のその人にあった本を選ぶ『選書』を行っておられます。
これまで川上さんが KURKKU FIELDS へお越しになった際には、スタッフや関係者向けに本にまつわるワークショップを行っていたのですが、その中で「来場されたお客様向けに開催してみよう」という声も多々上がっていました。
そして、KURKKU FIELDS 5周年イベント『able for the future』のコンテンツのひとつとして、2種類のワークショップを開催する運びとなったのです。
ワークショップは午前と午後で別々のものを企画しており、午前に行っていたのが『Wandering Library — 選書家とともに図書館をさまよう』です。
このワークショップは、本を読むことについて川上さんの思いを聞いたのち、実際に参加者の方が提示されたキーワードをもとに、その方にあった1冊を選ぶというものでした。
参加者の方からいただいたキーワードは、『健康』や『心の安らぎ』といった概念的なものから、『普段はビジネス書ばかり読むのでそれ以外のものを』や『人生の節目なので一皮剥けた自分になりたい』などの具体的なものまで多種多様でした。
キーワードを受け取った川上さんはさっそく本を選ぶのですが、その条件は地中図書館にある本の中から選ぶこと。
「普段はもっと時間をかけて選ぶから難しいよね」
と謙遜気味に話されていた川上さんでしたが、頭の中の膨大な書籍情報を瞬時に整理して、時に即決し、時に逡巡しながら1冊を手にとります。
その後、参加者の方々には選ばれた1冊を読んでいただく時間をご用意していたのですが、ご退館される際に「自宅近くの図書館でも探して読みます」や「書店で購入して続きを読みます」とありがたいお言葉をたくさんいただきました。
これは正しく、地中図書館が大切にしている『本との出会い』の瞬間であったと思います。
午後には『Dialogue in the Earth』というワークショップを行いました。
こちらは別会場で行われていたトークセッションに登壇されたゲストをお招きして、館内の読み聞かせホールに集まった参加者、そして川上さんと共に、テーマに応じた対話をするというものでした。
テーマは1日ごとに変わり、それぞれ『食』『いのち』『電力』の3つで、普段の生活に関係することもあってか、初めて会う人同士であっても会話が盛り上がりました。
家庭菜園や節電といった話題も、既に実践している方とそうでない方、意欲はあるけどよくわからないなどの悩みを抱えた方が、一堂に会してそれぞれの考えを述べる姿がとても印象的でした。
図書館は本来は静かに本と向き合う場所ではありますが、『個々人の学びを深める機会、考えをアウトプットする場所』として活用できたことを大変うれしく思います。
今回行ったワークショップはどちらも初めての試みでしたが、地中図書館としても学びの大きな取り組みでした。
定期的な開催は難しいかもしれませんが、徐々に地中図書館関係のワークショップを増やしたいと考えているので、その際はぜひご参加ください。
1999年鳥取県出身。奈良大学卒業。大学では仏教美術について研究していたが、本好きが高じて書店に就職。その後、perusシェフである兄から誘いがあり2023年4月 KURKKU FIELDS に入社。本を通した人間成長、知識の伝承・探究というものに価値を見出している。