絵本から飛び出して、生き物の「家」を探しに
UPDATE 2026.08.31
8月中旬、「ビオトープ観察会 -Special- カエルの絵本作家と行く絵本の世界の生き物探し」と題したイベントを開催しました。
『トノサマガエルの家さがし』の作者であるmuu(むー)さんをお迎えし、絵本の読み聞かせと、KURKKU FIELDSのビオトープやバイオジオフィルターでの生き物観察を行いました。
千葉県出身のmuuさんは、幼少期からカエルが好きだったそう。身近にいたカエルが急速に減少していることを知ったことをきっかけに、カエルとその住処に興味を持つようになりました。住宅設計士としての経験と、無農薬での米づくりの経験を活かしながら、カエルと人間がともに暮らせる環境づくりをテーマに創作を続けています。

まずは地中図書館で、muuさんご本人による読み聞かせからスタートしました。
『トノサマガエルの家さがし』は、田んぼの水がなくなり、そこに住めなくなった主人公・トノサマガエルのトノさんが、新しい家を探す物語です。
読み聞かせが始まると、集まった子どもたちはもちろん、大人たちも絵本の世界へ。
さらにこの日は、トノさんが家さがしの途中で見つける「家さがし屋」を模した紙芝居の枠が登場しました。絵本の世界からそのまま飛び出してきたような仕掛けと、物語に登場するカエルロボットに、子どもたちは釘付けになっていました。

読み聞かせの後には、子どもたちと一緒にミニクイズも。
「カエルを守るためには、田んぼの水をずっと残さなければならない。○か×か?」
正解は、○。
田んぼの水を抜いて土を乾かす「中干し」の際に、オタマジャクシやカエルの卵まで流れ出てしまうことがあるそうです。カエルが暮らすには水のある場所が大切なので、田んぼの水を抜く時期を調整することで、オタマジャクシが大きくなるまで生き残ることができるそう。
そしてもうひとつ、ちょっと意外な問題が。
「海外では、カエルを守るためにカエルのサウナが作られた。○か×か?」
こちらの正解も、なんと○。
作中でトノさんが住むことを決めたのもサウナ付きの家ですが、数十年前に海外で問題となったカエルツボカビ症という病気には、一定の温度を超えることで症状が改善する性質があり、人間がカエルのために黒いレンガを使ったサウナを作った事例があるのだそう。
カエルサウナは、穴を開けたレンガブロックを日の当たる場所に置いたもの。この中にカエルが入ることで、病気の改善につながるのだそうです。
絵本を入り口に、子どもたちが知らなかった生き物の話が、次々と広がっていきます。

読み聞かせの後は、いよいよ外へ。
KURKKU FIELDSの生き物博士、山﨑くんに案内してもらいながら、みんなでビオトープやバイオジオフィルターを歩き、生き物を探しました。
絵本の中で見ていた世界が、目の前の景色へと変わっていきます。
カエルだけでなく、さまざまな生き物について話を聞きながら、「この場所にもこんな生き物が暮らしているんだ」と、ひとつひとつ発見していきました。

生き物探しの最後にはタイニーハウスビレッジの中にあるビニールハウスへ。
この日は天候が不安定だったので、マザーポンドや森で探す予定だった生き物たちは、屋根のある場所で観察しました。

KURKKU FIELDSでは、耕作放棄地だった谷津田の再生などを通して、かつてこの場所にいた生き物たちが戻ってきています。
muuさん自身も、佐倉市で無農薬の稲作や里山再生に取り組んでいます。
絵本の中で描かれているカエルの家さがしと、KURKKU FIELDSで行っている循環の取り組み。
場所は違っても「人間だけのためではない暮らしの場所をどうつくっていくか」ということに共通するものがあります。

muuさんが絵本の中で描く「まるいたんぼ」は、大きな丸の中でお米をつくり、その中の小さな丸をカエルの暮らす場所にするというもの。
人間のための場所と、生き物のための場所。その大きさやあり方を調整しながら、どうすれば一緒に暮らしていけるのかを考えます。
自然を守る、と聞くと、どこか遠くの森や山の話のように感じることもあります。
でもこの日の観察会では、足元の水たまりや田んぼ、草むらの中にも、たくさんの生き物の暮らしがあることを、実際に見ることができました。
絵本を読んで、カエルの目線になってみる。
クイズを通して、生き物のことを知る。
そして実際に外へ出て、自分の目でその「家」を探してみる。
約15名の参加者のみなさんと過ごしたこの時間は、絵本の世界とKURKKU FIELDSの自然がつながる、特別な観察会になりました。
最後には、muuさんから原画を使ったマグネットのプレゼントも。午後からはポップアップも開催し、絵本の販売やサイン会も行われました。


絵本を読み終えたあと、外へ出て、実際の自然を歩いてみる。そのとき、いつもの景色が少し違って見えるかもしれません。
muuさんは、絵本が人の暮らしと自然再生活動をつなぐ架け橋になれば、と話してくれました。
カエルの暮らしと人間の暮らしを見つめ直し、生き物のための自然やデザインが少しずつ増えていくこと。
この日のイベントが、そのことを考えるきっかけになっていたら嬉しく思います。

『トノサマガエルの家さがし』
muu/みらいパブリッシング
