百聞不如一見
UPDATE 2024.09.30
こんにちは。山名隆也です。
今日は地中図書館の館長らしく『学び』のヒントとなるような、そんなお話しをお届けしたいと思います。
『百聞不如一見』(百聞は一見にしかず)
多くの方が聞いたことのある故事成語だと思います。
ご存知の通り「人の話しを何度も聞くより、自分の目で確かめた方が理解できる」という意味の言葉です。
この言葉を知らなくても、似たような経験をしたということもあるでしょう。
『見』のところが『食』や『行』にしても同じことで、つまりは「何事も自分で経験した方が理解できる」ということです。
ここで誤解しないでいただきたいのですが、自分で体験したことの方が価値が高いと言いたいわけではないのです。世の中には自分が体験できないことや、習得できない技術・知識は数多くあります。そういった物事を、伝聞や読書から間接的に学ぶことも大切です。ただ、その学びをしっかりと自分の中に定着させるための最後の一押しが、『一見』に当てはまるのではないでしょうか。
ひとつ例をあげてみましょう。
ここにある2冊の本は、ハーブについて書かれた事典です。
左)『基本ハーブ事典』著:北野佐久子(東京堂出版)
右)『増補改訂 心とカラダにやさしい316種 ハーブ&スパイス事典』著:伊藤進吾 / シャンカール・ノグチ(誠文堂新光社)
ある物事について学びを深めようと思った時、最近だとインターネットで検索することや、解説動画を見るという選択肢もありますが、多くの方が真っ先に手に取るのが本だと思います。
ここで紹介した本も、各種類ごとのハーブが写真やイラストつきでていねいにまとめられており、基本を学ぶうえではぴったりの書籍です。
しかし、ここに書いてあることを全て記憶したとしても、バジルが『クローブに似た芳香がある』ことや『摘みとっただけで空気が香る』こと、『さわやかな甘い香り』であることを本当の意味で学ぶことはできません。
本に書いてあることは、いわゆる学術的なものであったり、筆者の主観であったりするからです。
いい香りと記してあっても、自分にとっては苦手な香りということもあるでしょう。
そこに『百聞不如一見』という言葉の本質があるように思います。
ということでエディブルガーデンにやってきました。
ここでは約50種類ほどのハーブが栽培されており、シェフが料理に用いるため摘みに来たり、ファームツアーの収穫体験に利用されたりしています。
こちらがスイートバジル。一般的にバジルとよばれているハーブです。
今回撮影したときは元気がなかったのですが、それでもバジルの側にいるだけで香りがしてきました。
葉を一枚摘み取って指の腹で擦ってみると、事典の説明にあったように『さわやかな甘い香り』がしてきました。
続いてシナモンバジル。
名前の通り、シナモンに似た独特の香りがします。
文字の並びだけでも予想はついていましたが、実際に体験してみると名前の理由も納得です。
最後はホーリーバジル。
インドでは神話に登場する聖なるハーブとされています。書籍の中では信仰や死者への儀礼に関係するハーブであることにも触れられています。
香りは柔らかく上品な甘さで、個人的には一番好みのものでした。しかし、甘い香りの中に、人によっては不快に感じてしまうような独特の香りもあり、そのような特異性が宗教的な要因と結びついているのかもしれません。
このように、座学で得た知識に納得できることや、一歩踏み込んだ思考に導いてくれるのが『一見』の面白い点です。
今回はハーブを参考にしましたが、KURKKU FIELDS は植物や昆虫といった生き物以外にも、ソーラーパネルによる発電施設や堆肥を製造する様子など、たくさんの『一見』に溢れています。
ぜひ学びの一助にお役立てください。
1999年鳥取県出身。奈良大学卒業。大学では仏教美術について研究していたが、本好きが高じて書店に就職。その後、perusシェフである兄から誘いがあり2023年4月 KURKKU FIELDS に入社。本を通した人間成長、知識の伝承・探究というものに価値を見出している。