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KURKKU FIELDS REPORT
目に見えない力

目に見えない力

#レポート #寺田本家

UPDATE 2025.1.31

こんにちは。マーケットの豊岡です。

KURKKU FIELDS のマーケットには日々の食卓を豊かに彩る魅力的な商品が並んでいます。

どの商品にも生産者の方々の並々ならぬ想いやこだわりが込められていて、僕たちマーケットのスタッフは、その想いをお客さまに届ける架け橋としての役割も担っています。

もちろん、ただ商品を仕入れて並べるだけでは意味がないので、実際に生産者の方のもとに足を運び、生産現場を見ながら直接お話を伺うなど、日々の勉強も欠かせません。

僕個人としても、現地で学べることや経験できること、その活動の中で生まれる生産者の方とのつながりは大変貴重なもので、宝物のように感じています。

生産している物や手法、場所など、ほかの生産者さんと通じる部分はあっても決して同じ体験はできず、これまでに訪問した際の思い出は、それこそ色とりどり宝石のように違っていて、僕の心の宝箱を彩ってくれています。

生産者のみなさん、本当にありがとうございます。

今回は、そんな宝箱からひとつ取り出して、みなさんに紹介したいと思います。

紹介するのは、千葉県香取市で350年の歴史を待つ酒蔵の『寺田本家』さん。

無農薬・無化学肥料・無添加物で造られる“自然酒”において、御三家のひとつと称される酒蔵です。

自然酒は、身体に優しいことはもちろん、農薬や化学肥料を使わない材料を使用することで、自然環境にも優しく持続可能性の高い酒造りです。しかし、薬品に頼れない分、管理に労力がかかり、お酒の原料であるお米を作る時点から多くの労力が必要となります。

そんな中、寺田本家さんは米農家さんの大変さを体験するため、蔵の近くの耕作放棄地だった谷津田を開墾し、稲作も始めたそうです。

酒造りのゼロ歩目とも言える稲作まで取り組むなんて、自然酒醸造への並々ならぬ覚悟を感じます。

見学に伺ったのはつい先日で、仕込みの忙しい時期にも関わらず、貴重な酒蔵内を見学させていただきました。

寺田本家さんの酒蔵は、神崎神社のすぐ裏手にあり、敷地全体が澄んだ空気に満ちています。

凛とした佇まいと優しい笑顔が印象的な蔵人の山口哲平さんの案内で酒蔵の中へ。

歴史ある酒蔵に一歩踏み入れると、まるで神社の境内に入り込んだような厳かな空気に包まれます。

この場所にいるのは神様ではありませんが、日本酒造りに欠かせない麹菌・酵母菌・乳酸菌が至るところに棲みついているのだそうです。

もし菌が目に見えたら、『もののけ姫』の木霊みたいに、あの梁に座ってるのかな。なんて想像をしつつ、目の前に鎮座する巨大な甑(こしき)の中を見せてもらいます。中には蒸された玄米がぎっしり。

さらに驚かされたのは、この大量に蒸された玄米の運搬方法。なんと蒸し上がった米は木桶に入れて肩に担いで運びます。

以前は効率化のために機械を使用していたのですが、自然酒造りに舵を切ったタイミングで手作業に戻したそうです。

信念を持って手作業を行う姿は神事のようでした。

次に見せていただいたのが麹室。

菌が活発になるための温度と湿度が保たれた室内には、米の甘い香りが充満していました。

天井・壁・床には炭が敷き詰められ、菌が心地よく働ける場になっているそうです。まさに菌ファーストな環境です。

その次に酒のモトとなる酒母を作る重要な場所、酒母室も見せていただくことができました。

酒母造りは、蒸米・麹を手作業で摺りつぶし、硝酸還元菌や乳酸菌、酵母菌が自然にやってくる発酵場を整えるため、下の写真のように道具を使って丁寧にかき混ぜます。この作業は、二人一組で行いますが、相方と呼吸を合わせるための酛摺り唄を唄いながら行います。

山口さんの唄声に菌たちも呼応するように、酒母から心地良さそうにプクプクと気泡が立ち上がっていました。

酛摺り唄は、寺田本家さんのホームページで観ることができます。

巨大な木桶は、地元千葉県の山武杉からできた物で、杉を伐採するところからファンのみなさんと力を併せて作り上げたのだそうです。木桶にも多様な微生物が棲んでいて、その微生物たちの力が関わることで豊かな味わいの日本酒が完成します。

最後に試飲をしながら山口さんとお話しする時間をいただけました。

同じ造り方をしても、完成したお酒はその時々の菌の働きによって味や香り、色などの仕上がりが全く異なるそうです。甘かったり、酸味が強くなったり、時にはぬか漬けのような香りがすることも⋯。しかし常連のお客さんたちは、その違いも楽しみにしているそうです。

思いがけず失敗することもあるのでしょうか?

と聞いてみたところ、想像した味にならないことはあっても、仕込んだものが駄目になってしまうことは滅多にないそうです。

まさに蔵に棲みついている菌の強さとポテンシャルを最大限に引き出す、蔵人さんたちの技術や経験のなせる業なのでしょう。

「仕上がりは全て菌に委ねています。」

菌と蔵人さんの信頼関係が垣間見れるとても印象的な言葉でした。目に見えない菌によって自由に醸される様子は、さながら神様の見えざる手が蔵人さんと呼吸を合わせてお酒を造っているようです。

KURKKU FIELDS でも、未来に向けた自然の循環を続けるために様々な微生物の力を借りて排水を浄化し、畑の土壌を豊かにしています。

目に見えない菌がもたらしてくれる大きな恩恵に感謝し、共存するために両者が棲みやすい環境を整え、お互いを守り合うことが大事なんですね。

マーケットには、寺田本家さんの日本酒をはじめ、甘酒や酒粕、麹や書籍を取り揃えています。

飲んだ人の心身に活力を与え、さらには地域も元気にする、まるで守り神のようなお酒たち。

一期一会の出会いをぜひお楽しみください。

豊岡佑介YUSUKE TOYOOKA

千葉県出身。千葉県内で市役所職員として13年間勤務。農業や食によるまちづくりの推進に関する部署に所属し、生産者と交流することが多かった中、視察に訪れた KURKKU FIELDS で、生産者の想いを敬重し、魅力的な商品で溢れるマーケットに興味を持ち入社。

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