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一枚のパンを分け合うように。1周年を迎えた「コパン」の歩みと、これから

一枚のパンを分け合うように。1周年を迎えた「コパン」の歩みと、これから

UPDATE 2026.09.29

月末の月曜日、仕事終わりの夕暮れ時。KURKKU FIELDS(以下KF)の一角に机やいすを運び、準備を始めるスタッフたちの姿があります。テーブルの上に並ぶのは、自家製小麦を使用したパンドミや、豊かな薫香漂うシャルキュトリーのオードブル。
それぞれのお皿を持ち寄り、あたたかな輪が少しずつ広がっていきます。

「同じ釜の飯を食う」。
同じ場所で寝食を共にしたり、苦楽を分かち合ったりして強い信頼関係で結ばれる仲間のこと。この慣用句は、ひとつの大きな釜で炊いたご飯を一緒に分け合って食べる、日本の生活習慣に由来しています。

この慣用句によく似た言葉が、フランスにも存在します。
それが、今回のテーマである「コパン(copain)」です。

現在は「仲間」や「恋人」を意味する言葉ですが、その語源は「パン(pain)を共に(co)分かち合う人」という意味の古フランス語。短い言葉の中に、忙しい日常の中でも家族や友人と時間をかけて食事を楽しみ、交流を深めるフランスの食卓のあり方が伺えます。

この文化に倣い、KFでは毎月1回、スタッフが集い、共に夕食を分かち合う自由参加の時間を「コパン」と名づけ、育んできました。

昨年9月にスタートし、今月でちょうど1年。今回は、この試みを提案したLankaの森さん、組織文化の醸成に取り組む剛さんとともに、コパンの今までとこれからを語りました。

一本のバゲットから生まれた原体験

森さんは以前、フランスへ渡り、パンと洋菓子の店に住み込みで働いていた経験があります。

「毎週、休日の朝は、2、3時間かけて家族みんなで朝ごはんを食べながら、この1週間あったことや挑戦したいことをじっくり話す習慣があったんです」

そんなある日、一緒に働いていた男性からバゲットを差し出され、「反対側持って。ちぎってみなよ、コパンでしょ」と言われたそう。

「パンを分けてくれる仲間として認めてもらえたという感覚がありました」
その時に感じた喜びを、KFで働く仲間たちとも分かち合いたい。
そんな思いから「コパン」は始まりました。

そもそものきっかけは、イベントで様々な部門のスタッフと出かけていた車中での会話でした。お客様向けに提供したいサービスについて話す中、当時、入社して間もなかった森さんはその原体験とともにコパンを提案。周囲のスタッフは「おもしろいね、やってみようよ」と声をかけ合い、その翌週には仲間とテーブルを囲みました。

KFには「やってみたい」と自発的に何かを始めるスタッフが多くいます。けれど、これまではそれが一部のスタッフ間だけで終わってしまったり、忙しい中で継続しない部分もありました。

その内々の取り組みを会社のイベントとして広げ、文化にしていこうと提案したのが、剛さん。「身内で終わってしまうのがもったいなく感じて。ずっと続いていくものができたらいいなと思っていました」と話します。

剛さんの言葉の背景にはKF初期の光景が重なっています。
この地での場づくりが始まったばかりのころ。現在とは大きく異なり、建物はFLACC棟しかなく、従業員は両手で数え切れるほどでした。外部ディレクターとして関わっていた剛さんは、昼時になると自然と人が集まり、一緒に昼食を作り、食べ、片付けをしてまた自分の持ち場に戻っていく、その姿にKFの良さを感じていました。

事業が広がり仲間が増えた今、お互い話したことのないスタッフが生まれるのは自然なこと。だからこそコパンという場所を通して、今一度共にこの地を創る横の絆を深めていきたい。そんな願いも込めて、この歩みは始まりました。

葛藤と新しい工夫

しかし全体に向けて開催してみると、継続するからこその難しさも見えてきました。
業務や時間帯の都合で参加しづらいスタッフがいたり、決まった顔ぶれになってしまったり。自由参加であるがゆえに準備や片付けが特定の人任せになってしまうことも。

「みんなで創る会にしたいと思っています」と森さん。
新しい仲間が増えてきた今、コパンの原点に立ち返り、それぞれが場のつくり手になる。
今回の「ものがたり」を届けることも、その意味を分かち合うためのひとつの問いかけです。

小さな試みとして、自分のお皿やカトラリーを持参してみること。空き瓶を置いておき、誰かが摘んできた花を挿してみること。あるいは、食だけでなく「問い」や「お気に入りの本」を持ち寄ってみること。

コパンでは、ルールで縛るのではなく、関わるきっかけを重ねていくことで、心地良い空間が育つ仕組みを整えていこうとしています。

実りを味わい、対話を重ねる

継続していく中でもう一つ、大切にしている視点があります。
それはコパンがただお腹を満たす場なのではなく、この土地の恵みや仲間の手仕事に改めて向き合う時間であるということ。

森さんはいつも、その時の旬を持ち寄ってくれます。
青トマトのジャム、びわシロップ、パイナップルやバラのジャム、そして場内のハーブをふんだんに使ったハーブティー。

フィールドを散策する森さんの手にはいつも植物があり、まるで宝探しをしているかのよう。一見何もない草むらも、スタッフの目には季節の宝箱に映ります。森さんの説明を聞きながらハーブティーを口にすると、四季の移り変わりがじんわりと身体に染み渡ります。

コパンのテーブルに並ぶそれぞれの料理に、ものがたりがあります。

農業スタッフやご縁のある生産者さんの手間暇、素材を最大限に生かすシェフの技術、命と自然の力。この時間はそうした背景を五感で味わい、豊かさを再発見する場であってほしいと願います。

また部門や社歴の異なるスタッフが言葉を交わすこともコパンの魅力です。

土地の記憶が語られることで、新しいスタッフにとっては深みを知る機会となり、長くいるスタッフにとっては原点を思い出す時間になる。
部門内の話題をオープンにすることで普段の現場では交わらない視点が交差する。

コパンは新しい挑戦や創造の種の芽生える、対話の場にもなっています。

取材の最後にはこれからのコパンへのアイディアが溢れました。

「試作品とかワークショップを気軽に試せる場にも使えそう」
「冬場は外で火を囲んで、あたたかいお鍋をつつくのもいいね」
「営業前に地域の方を招いて、ロングテーブルで一緒に朝ご飯を食べられたら素敵」
「日中にみんなで収穫して、夜にそれを料理して囲めば、参加できるスタッフも増えないかな」

取り組みが始まった時のように、「やってみたい」という自発的な想いが形になり、前向きな気持ちが伝播していく。
コパンはそんな、心地よい循環の起点になっていくのかもしれません。

忙しい日常の中、一人で済ませる食事が増えがちな現代に、誰かと顔を合わせ、食卓を共にする時間は、私たちへ健やかな余白を取り戻してくれるはず。

この場所と互いの営みを見つめなおし、たたえ合うひとときは、これからの日々を支える確かな糧となっていきます。

1周年を迎えたこのテーブルから、自分自身とこの場所を内側からより良くしていく。そんな新たな試みが、今日も始まっています。

金澤美咲Kanazawa Misaki

東京都出身。介護福祉士として勤め、人の尊厳に関心を寄せる。その後北欧へ留学。パーマカルチャーやエコビレッジなど自然環境に関する事柄から自尊や民主主義、福祉など幅広く学ぶ。MISSIONに内包される「明日を自分らしく生きる」という言葉に共感し、KURKKU FIELDSに入社。現在は採用や育成、文化醸成を担っている。

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