「生きる力を養う学校」開催レポート / 第2回『土と食す』
UPDATE 2024.12.30
みなさん、こんにちは。「生きる力を養う学校」の事務局を担当している中村です。「生きる力を養う学校」は日々の暮らしの中で新たな視点を持ち、生きていくための知恵を学べる場を目指しています。
2024年は「土」をテーマに全3回開催。今回の記事では、11月24日(日)に開催された第2回『土と食す』のレポートをお届けします!
朝7時半。粘土を成形して乾かした器を藁の上に丁寧に置いていきます。これらは『あわ焼』の陶芸家・西山光太さんが KURKKU FIELDS の土で作った土器の数々です。その器の上に藁を被せていきます。
藁焼きと呼ばれるこの技法は弥生時代に用いられていたもので、今回は KURKKU FIELDS 産の稲藁を使用しました。
ドーム状に藁を重ねることで即席の窯が完成。西山さんによると、土器は600〜900℃という低い温度で焼き上げるため、陶器ほどの強度にならないそうです。
本来であればしっかり焼き上げてからゆっくり冷まして翌日器を取り出すのですが⋯⋯
今日は、参加者のみなさんと一緒に熱々の土器を取り出すため、朝早くから藁焼きをスタートさせました。
10時頃、参加者のみなさんが集まり、さっそく藁焼きの様子を観察。そして西山さんから器づくりに適した「土」について説明がありました。
それは前回の『土を耕す』の回で学んだ畑の土とは全く違うものです。西山さんによると陶芸に使う「粘土」はすごく長い歳月をかけてできあがるもの。また、それがどこにあるのかもすぐにはわからないそうです。
西山さんは千葉県館山市を中心に活動していますが、この南房総エリアの土は陶芸に不向きだと言われてきたそうです。そんな中でも試行錯誤を繰り返し、あわ焼として作品を制作しています。
KURKKU FIELDS ではこれまで、森の小川周辺で陶芸用に粘土を採取していましたが、今回はそれに加えて鶏舎の裏で陶芸に適した土を発見しました。10月に実施した「生きる力を養う学校」のプレイベントではこの鶏舎裏の土を参加者の皆さんと採取し、西山さんにお渡ししていました。
粘土を採取した森を見学した後、実際に KURKKU FIELDS の土をつかって器作りスタートです。片手に乗るぐらいの粘土の塊を受け取った参加者のみなさん。西山さんから手捻りのコツを教わった後、思い思いに作品づくりに没頭します。
西山さんからは「葉っぱや木の枝などを拾ってきて、スタンプのように器に模様をつけることもできますよ」と素敵なアドバイス。1時間ほどすると個性豊かな作品等ができあがりました。
さて、そろそろ藁焼きの土器を取り出す時間。上手く焼けているでしょうか。少し緊張しながら、軍手をはめて、まだ熱さを感じる藁の中から器を探します。
割れてしまっているものもありますが、きれいに焼き上がっている土器もたくさん出てきました!
これらの土器は後ほど昼食で使います。
今回、鶏舎裏で採取した土を使うご縁で、ランチに鶏の料理をいただくことにします。
今日のメニューは鶏肉を野菜と一緒に薪火の釜で炊いたスープ。鶏の内臓の炒め物。それに鶏の胸肉と椎茸のリゾット。
この胸肉は土器の壺の中でスモークしてから、リゾットに使用しました。最後にデザートは卵形の一品。フェイジョアという酸味のあるフルーツをペーストにして卵の黄身に見立て、白身はヨーグルトとメレンゲのムースでできた『キミはフェイジョア』というユニークなスイーツ。
口に運ぶと「なるほど!」と笑顔になりました。ランチの数品は先ほど出来上がったばかりの土器に盛っていただきました。
実はこのランチの鶏肉は KURKKU FIELDS で飼育されていた鶏です。
KURKKU FIELDS では平飼いで主に採卵用として養鶏しています。そして約2年の間、卵をいただいた後、その親鳥等をお肉としていただきます。通常は鶏の解体業者に依頼し、お肉にしてもらっていますが、今回はKURKKU FIELDS の循環のひとつとして、また自分たちがいただく命として、参加者のみなさんに鶏を絞める作業に立ち会っていただきました。
養鶏担当の松村さんがこれまで大切に育てた鶏を、松村さん自身が、冷静に優しくそして力強くナイフで命を絶ちます。この瞬間は参加者のみなさんの真剣な眼差しと静寂に包まれていました。
動かなくなった鶏は熱湯につけて羽を落とし、宮城シェフが解体し、徐々に見慣れたお肉の姿になりました。この一連の作業後にいただく鶏のランチは、感謝と一緒になって、いつもとは違う味わいでした。
今回、土を通してさまざまに KURKKU FIELDS の循環を感じる第2回になったと思います。KURKKU FIELDS の鶏の近くから採れた土。その土でできた器が KURKKU FIELDS の稲藁の中で土器になる。その器の上に卵や鶏が並ぶ。自然の営みを「土」を中心にして、また違った角度から感じられる1日になりました。
大阪市出身。関西学院大学総合政策学部卒業、イタリア食科学大学大学院修了。10年ほど大学職員として学生の海外派遣や留学生のサポートを行う。その中で異文化理解やソーシャルインクルージョンに食が深く関わっていると感じ、スローフード運動発祥の地へ留学。季節のものをシンプルにいただくイタリアの暮らしを気に入り、KURKKU FILEDSにイタリア文化に通じるものを感じ、2023年に入社。