焼きたてパンと農の恵みが届く「KURKKU FIELDS MARKET」ほたる野にオープン
UPDATE 2026.10.31
千葉県木更津市、ほたる野。かつてこの場所で地域の人々に親しまれていたパン屋「Casse-tête(カステット)」の跡地に、新しい灯がともりました。「KURKKU FIELDS MARKET(クルックフィールズ マーケット)」です。
朝、KURKKU FIELDSのベーカリー「Lanka(ランカ)」で焼き上がったパンが香ばしい香りとともに運ばれてきます。そこにあるのは、パンの販売にとどまらない「街と農場をどうつなぐか」というつくり手たちの想いです。
パン職人として大きな選択をした國吉さんと、その想いを街へとひらく土井さん。お二人に、Casse-têteがKURKKU FIELDS MARKETへと変化していく過程を伺いました。

國吉さんとKURKKU FIELDSの縁は、約3年前に遡ります。当時、自身の店Casse-têteを営んでいた國吉さんは、週に1回ほどLankaの手伝いに入っていました。
3年前、Lankaは大阪の名店「ル・シュクレクール」の岩永シェフ監修のもとリニューアルオープンする際、遠隔でパンのクオリティを保ち続ける難しさが予想されました。そこで、かつてル・シュクレクールでの修行経験があった國吉さんに声がかかりました。
そんな中、國吉さんはやがて大きな転機を迎えます。
「店を切り盛りする楽しさはもちろんありました。でも、原材料費や人件費の高騰など、個人店を維持していくリスクは年々大きくなっていたんです。それなら、チームで動いたほうが職人としてできることが広がりますし、地域に対してもっと大きな影響を与えられるのではないかと思いました。そして、外部から関わっていたからこそ、場内で材料の全てが揃う凄みを実感していました」
農場の豊かな食材、そして志を同じくする仲間。外側にいたからこそ見えたKURKKU FIELDSのポテンシャルに、國吉さんは自身のパンづくりの未来を重ね合わせました。
こうして個人店の店主という立場に区切りをつけ、正式にLankaの一員になることを決めた國吉さん。職人として新たな一歩を踏み出すことになります。


現場で向き合うことになったLankaのパンづくりにおいて、大前提にあるのは「おいしいこと」です。けれど、その先にある國吉さんの哲学はとてもしなやかです。
「Lankaの指導の中で岩永シェフが言っていたのは、『絶対的なおいしさなんて人それぞれ違うから、チームが“おいしい”と思えるラインまで届いたら、まずは一度世に出してみる。そこでお客さんの反応を見ながらブラッシュアップしたり、時にはやめたりすればいい』ということでした。大事なのはル・シュクレクールのコピーをつくることではなく、ここにしかないパンをつくることです」
Lankaでは、自家製酵母である「ルヴァンリキッド」を使ったバゲットなど、ル・シュクレクールのルーツである伝統的な製法を守りつつ、根底にあるのは、岩永シェフから受け継いだ「人とのつながりを軸にする」という考え方です。
「スペックや条件を先に掲げて全国から食材を探すのではなく、イベントや縁で出会った人がつくる小麦や食材を使ってみる。そういう人とのつながりからパンが生まれていきます。『オーガニックな食材だから』、『ケージフリーの卵だから』という理由だけで選ぶわけではないんです」
その象徴ともいえるのが、今やLankaの定番となっている「bocchi」のピーナッツを使ったパンのエピソードです。 Lankaをリニューアルオープンする際に材料を見直す機会があり、その中で千葉県旭市で落花生を手がけるbocchiに出会いました。その後、bocchiが主催するイベントへ実際に足を運び、交流を深めていく中で生まれたのが、あの定番パンでした。
条件やスペックで選ぶのではなく、人と出会い、その想いに共感したからこそ商品になる――。土地と人の無理のない巡りや縁を大切にする姿勢が、日々のパンづくりにそのまま息づいています。

Casse-têteの場所を引き継ぎ、新しいMARKETとして再スタートを切る際、土井さんが感じていたのは「地域との距離感」でした。
「木更津や近郊に住んでいる方にとって、KURKKU FIELDSは『近くにあるけれど意外と行かない場所』だったんです。だからこそ、街の中にあるこの場所に、単なるLankaの2号店ではなく『MARKET』をつくろうと考えました」
「店頭に立つスタッフ自身が『どんな人がどんな考えで何をつくっているのか』を深く理解し、お客さんに伝えられる場でありたいと思っています。ジビエなど、説明を聞いて『自分には合わないな』と思われることがあってもいい。まずは知ってもらうことがすべての入り口なんです」
毎朝、Lankaで焼かれたパンは土井さんたちの手でMARKETへ運ばれます。土井さん自身も現場に入り、焼き上がりの状態を確認しながら、つくり手と受け取り手へのコミュニケーションを欠かしません。
「営業日の朝には、焼きたてのパンがちゃんと並んでいる。この当たり前を続けていくことが、街の方々との信頼関係の第一歩だと思っています」と語ります。


リニューアルオープン当初は、Casse-tête時代からの常連客が中心でした。「パンの種類が減って寂しい」という声が届くこともありましたが、そこには國吉さんの想いがありました。
「昔のパンをすぐに復活させることよりも、まずは今、Lankaのメンバーが手間隙かけて丁寧につくっているパンを知ってほしかったんです。Lankaが向き合ってきたパンをまずはお客さんに届ける。そのうえで、Casse-tête時代のパンもできる範囲で少しずつ取り入れていきたいと思っています」
焦らず誠実にコミュニケーションを重ねる中で、少しずつ変化が生まれています。 だんだんとKURKKU FIELDSの商品を買うために訪れる方やリピーターも増えてきました。
店頭には、パンのほかにシフォンケーキやフィナンシェ、オリジナルのハーブシュガー、卵やシャルキュトリー、地元作家が手がけた器などが並んでいます。
「KURKKU FIELDSが体験や食を通して日々の“気づき”を得るきっかけの場所であるならば、MARKETはその気づきを日々の生活に取り入れ、ずっと繋げていくための入り口です。今後は野菜や調味料なども増やし、季節感を感じてもらいながら、日常の買い物が楽しくなる場所にしていきたいですね」と、今後の展望を語ってくれました。


MARKETを訪れたら、ぜひ試してほしい商品があるといいます。
土井さんのおすすめは、定番の「キャロットケーキ」。
「KURKKU FIELDSといえばニンジン。手土産にも自分用にもぴったりで、ハレの日も普段の日も選んでいただける商品です」と話します。

一方、國吉さんがおすすめするのは「パンドランカ」。
「大きな四角い容器で豪快に仕込み、切り分けて分かち合う、まさにKURKKU FIELDS Lankaの代名詞のようなパンです。水分量が多くてもちもちしていて、スライスしてトーストすればどんな料理にも合います」

パンを焼く國吉さんと、街へ届ける土井さん。
「目的がなくても『今日は何があるかな』とふらっと覗いてもらえるお店になったら」と二人は話します。
二人の想いが重なる「KURKKU FIELDS MARKET」は、今日も焼き立てのパンと季節の恵みを取り揃え、街の人々を優しく出迎えています。
