新たな目を持つことが真の発見の旅
UPDATE 2022.10.6
真の発見の旅とは、見る景色を変えることではなく、
新たな目を持つことである。— マルセル・プルースト
僕にはいわゆる「放浪の旅」みたいなことをしていた時期があり、毎日見る景色を変えることが旅だと思っていました。その旅は毎日刺激的で新鮮で強烈に記憶に刻まれています。しかし、新たな目を持つことが真の発見の旅というマルセル・プルーストの言葉は、旅好きの僕を養鶏場に導いた理由の1つでもあります。旅にはそのような類もあるのだと気づかされた言葉でした。
毎日鶏舎を往復し、鶏の世話をするという、一見、毎日がデジャヴのような生活です。しかし、その同じ景色の中で、新たな目を持ち、毎日何かを発見できたら、それってとても粋な旅だと思いました。
例えば、天敵が地上にいるときと上空にいるときで鳴き声のピッチが異なるとか、優しき雄鶏はエサを発見すると鳴き声で雌鶏を呼び寄せたり、血気盛んな雄鶏に飛び蹴りをされないためには鶏舎内をどんな歩き方で歩くかなど、挙げ始めればきりがありません。
先日は、鶏の夜間調査と題して、段ボールを一枚敷き、鶏舎前で一晩過ごしました。
大量の蚊に悩まされましたが、鶏はどう感じたか。それは分かりません。「一番鶏」が何時に鳴きはじめるのか、雌鶏は何時に起き、何時に寝たのか、日照時間で季節を感じ取る鶏にとっては、日の出、日の入りが関係していることなど、肌感覚の実体験が僕の発見の旅です。
観察し、発見し、試す、というサイクルのルーティーンの中で、鶏の健全性にフォーカスしています。羽艶が良く、良質な鶏糞を排出するというのが探求テーマです。探求先には、
卵の味はもちろん、生命力、そして愛情の含んだ卵をみなさまに感じていただけるような鶏に育っていくと感じています。
卵を産むのは鶏です。
卵だけでなく鶏に関心を持っていただけるよう、これからは養鶏場の情報を発信させていただくので、卵を味わいながら、鶏を想像していただけたら幸いです。
養鶏部門 松村洸大
1994年生まれ。東京都府中市出身。20歳の時に旅したインドで鶏に関心を持ち、大学卒業後、北海道生活に浸りながら養鶏業に携わる。都内の実家で10ヶ月間、鶏(雄雌)との共同生活を経て、2022年2月に株式会社耕すに入社。現在も鶏に取り憑かれながら、循環をテーマにした美味しい卵をお客様にお届けできるよう、日々研究中。