ペナシュールBOSO
UPDATE 2024.02.29
こんにちは。マーケットの中村圭です。
みなさん、ラム酒はお好きですか?
私にとってラムのイメージは「強いお酒」「モヒートのベース」ぐらいでしたが、ラム酒を製造している『ペナシュール房総』のアグリコールラムを飲んだ時の衝撃は忘れられません。上質な和三盆を口にした時のようなふくよかな甘さの奥に潮の香りを感じるお味!
もちろん、お酒としてもしっかり強力でした。
先月、そのペナシュール房総にラムの原料であるサトウキビ収穫のお手伝いにスタッフ11名で行ってきました。千葉県南房総市にあるペナシュール房総 “RHUM DE LA PÉNINSULE DE BOSO” は、かつてその地域で行われていたサトウキビ栽培を復活させ、自家栽培の原料でラムを造っています。
代表の青木大成さんは15年ほど前に地元である南房総に戻り、家業の寿司割烹店「ちどり」を継承。また、現役の漁師としても活動されています。
この地域では戦後から昭和40年代まで主に自家消費用にサトウキビが生産されており、青木さんもサトウキビのある風景が記憶にあるとおっしゃっていました。
南房総は温暖で関東ではサトウキビ栽培に適しているエリアだそう。収穫は11月〜2月頃。収穫から搾汁まではほとんどが手作業です。鎌で刈り取ったサトウキビを軽トラで搾汁場まで運び、葉を落とします。
その後、ローラーにサトウキビを通して搾汁。
ここから出てくるのが搾りたての白いサトウキビジュース!
搾っている最中からとってもまろやかで甘い香りが漂ってきます。口に含むと濃厚な甘さ、なのに後味が驚くほどスッキリさらっとしているジュースでした。収穫してから搾汁までは素早く(遅くとも翌日ぐらいには)完了させないと品質が落ちるため、時間との勝負です。
一般的にラムはサトウキビから砂糖を製造する際に出る「糖蜜」から作られます。そのためラムの歴史は砂糖の歴史と重なります。そして砂糖の歴史は奴隷の歴史とも言われます。
サトウキビはニューギニアが原産とされ、インドで砂糖が生み出されたようです。砂糖は薬としても珍重されましたが、その後、大航海時代にコロンブスが新大陸にサトウキビを持ち込み、その生産のために多くの人々が奴隷としてアフリカ大陸から連れて来られました。みなさんもきっと授業で聞き覚えがある「三角貿易」に深く関わっているのがラムなのです。
そんな暗い歴史の中で生まれたラムですが、ペナシュール房総のラムには人を集める魅力があると感じます。
サトウキビのある風景を復活させ、人々を巻き込んで収穫する。古民家を改装した美しい蒸留所でラムの製造まで一貫して行う姿勢。そして何より作り手たちのキャラクター。
青木さんはとにかく陽気で冗談が好きな方ですが、ラテンな人柄と顔の広さ、その一方で上質でストーリーを持った商品を生み出す実行力に溢れています。
スタッフの三瓶さんは青木さんの後輩で、介護職をされていたそうですが、ラム造りに参戦。サトウキビの栽培から蒸留まで幅広く知識を備え、ペナシュール房総の縁の下の力持ちともいうべきお方。実はお酒はあまり飲めないと言いつつも、ラム造りへの情熱がすごい!
前年の収穫にはのべ200人が参加したというのも、この2人のタッグを見ると納得です。
にぎやかに収穫し、ランチにはみんなでラムを味見したり、サトウキビのベッドでお昼寝したり。鳶が飛び回る穏やかで、1月にしては暖かい日に気持ちの良い汗を流しました。私たちが関わったサトウキビが美味しいラムになる日を想像してマーケットで待っています。
大阪市出身。関西学院大学総合政策学部卒業、イタリア食科学大学大学院修了。10年ほど大学職員として学生の海外派遣や留学生のサポートを行う。その中で異文化理解やソーシャルインクルージョンに食が深く関わっていると感じ、スローフード運動発祥の地へ留学。季節のものをシンプルにいただくイタリアの暮らしを気に入り、KURKKU FILEDSにイタリア文化に通じるものを感じ、2023年に入社。