『環境、夏、暮らし、そして水』後編
UPDATE 2024.09.30
循環の仕組みづくりと体験コンテンツの運営を担当している高橋です。前回は『夏と水』がテーマでしたが、今回は『環境と暮らしと水』をテーマにお話ししていきます。
「人間は環境を破壊する生き物というイメージがありますが、僕たちがここに居ることで、より環境が豊かになるような暮らしを目指しています。」
毎日開催されるクルックフィールズツアーの冒頭でお伝えしているセリフです。
クルックフィールズでは『バイオジオフィルター(BGF)』という仕組みを利用し水を循環させています。場内で使われた排水(トイレ、台所、シャワー等)はこの仕組みを通り、自然に還っていきます。実は、排水には微生物や植物にとっての栄養素が含まれていて、BGF 内の生き物が食事をすることによって水の汚れが取り除かれていく構造になっているのです。
きれいになった水はビオトープやマザーポンドといった大きな水辺となり、水棲の昆虫やカエルなどの生き物たちの住処となっています。
“僕たちが使い終わって捨てたものが他の生き物の楽園やご馳走になっている”
そのことを実感させてくれる BGF の仕組みはとても興味深いと思います。
8月。
クルックフィールズでは『SUMMER NIGHT』が開催されました。前回はこの期間中に開催されたイベントについてのお話しでしたよね。この SUMMER NIGHT 期間中は、日中の猛暑を回避するために土曜日と日曜日の営業時間を21時まで延長し、その代わりに木曜日も休業日としていました。
もともと火曜日と水曜日がお休みなので、合わせて3日間の休業日となったわけです。
実は、この増えたお休みの日。時間だけ計算するとたった1日、24時間の違いでしかないのですが、BGF にとっては非常に重要な時間だったのです。
「小川が干上がりそうだ」
ある日の木曜日。
僕の師匠の吉田さん(通称よっしー)が小川の異変を発見しました。
小川とは『サステナブリッジ』の下を流れている川のことで
バイオジオフィルターを経た排水が水源です。
小川にはカワニナという巻貝やエビをはじめ多様な生き物が生息しているのですが、僕たちがお休みしている間に、彼らの住処が消滅しかけてしまったのです。
一体どういうことかというと、そう『水』です。
最初にお話しした通り、BGF は場内から出る排水を水源としています。クルックフィールズがお休みの日は排水が流れないので、その分 BGF の水が減ってしまうということなんです。
「僕たちがここに居ることで、より環境が豊かになるような暮らしを目指しています。」
この出来事が、いつも口にしているセリフに強烈な実感を与えてくれました。
現在、小川が干上がりそうなときは水栓からお水を出し続けて対策しています。
さて、このように生き物の暮らしに関わっている水ですが、当然僕たちの暮らしにも関係しています。
今年の夏は猛暑に加えて雨の日が極端に少なく、野菜やフルーツをはじめ、場内を彩る植栽や森の木々にも大ダメージを与えていたので、毎朝天気予報を見ては雨が降るのを望んで一喜一憂する日々でした。
雨が降らないと困るのは野菜や植物だけでなく飲食店もです。
クルックフィールズのお水は100%が井戸水なのですが、蛇口から出る前には必ず、殺菌のための塩素が注入されています。
お水を使った分だけ塩素も補充をしなければいけないのですが、植物への水やりや、暑さ対策のための散水と、この夏はたくさんのお水を使ったので塩素の補充を何度もすることとなりました。よく晴れた日ほどお水と塩素の消費が多くなり、補充する塩素自体も重たいので大変でした。
前後編合わせて非常にボリュームのあるものがたりになってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。
自分で内容を読み返してみても、この夏、水にまつわることだけでこれほどのことを感じたのだと驚いています。
それだけこの夏の出来事が印象的だったということですね。
天気予報の見方もこれまでとは変わってしまいましたが、これもひとつの思い出です。
みなさんにもお水っておもしろいな、深いなって思っていただけたら幸いです。
1996年千葉市生まれ。
障害のある子どもの教育を専門とし、特別支援学校・小学校で勤務。不登校の子どもの学習支援事業を経営したのち、2023年に入社。循環の仕組みづくりと体験コンテンツの運営を担当している。