ココケッコー good な卵
UPDATE 2022.3.1
はじめまして。
養鶏部門の松村洸大です。
もし僕が鶏だったら、fry されずに fly したい。「揚げ鷄」にされる前に飛び立ちたい。寝る間を惜しまず、飛行訓練を続け、1m ⋯ 5m ⋯ 10m ⋯ モモ肉に匹敵するくらい発達したムネ肉を手に入れ、仲間を引き連れ、鶏舎から逃げ出すだろう。そして、鳥のように空を飛び、人間を見下ろし、最後は卵ではなく、糞を落として立ち去りたい。
「三歩あるいたら忘れる」といわれる鶏が、ケッコー賢かったら、このように考え、行動するかもしれないと空想してもおかしくないのが、現代養鶏の現状です。庶民の味方である安価な卵を産む鶏は、食べさせ産ませるだけの生き物で、意思はまったく持たない工業製品に例えられることもあります。
昔は、多くの家庭が数羽飼育していて、卵は見舞い品、鶏肉は牛肉に勝る高級品だと言われて、身近な存在ではあるけれど、貴重な食べものだったのです。庭先養鶏では、鶏を家族の一員として可愛がり、10年以上「生」を全うしていた鶏も少なくないと思います。それから時代は変わり、世は分業化が進み、鶏肉・卵は毎日のように見かけ、毎日のように食すけれど、鶏は遠い遠い存在になっていきました。
大量生産・大量消費の時代を経て、現在は世界各地でアニマルウェルフェアの議論が活発化しています。動物福祉と訳され、動物たちが本来もっている行動欲求をみたす環境づくりを推進する動きです。養鶏業で経済性を追求した結果、飼育法で強く批判されているのが主に3点です。
1.ケージ飼育(小さな仕切りの中で鶏を育てる)
2.強制換羽(お腹を空かせて産卵率をあげる)
3.デビーク(仲間を突かないようにクチバシを切る)
それぞれの詳しい説明は割愛させていただきますが、簡潔に述べると、狭いのは良くない、断食は良くない、クチバシを切るのは良くない、です。
もちろん、クルックフィールズ内にある鶏舎は上記3点とは無縁です。土の上で歩き回り、日光浴しながら砂浴び、昼寝、産卵箱で卵を産み、時に喧嘩もし、日没後に止まり木で就寝する環境のもとで生活しています。
日々鶏を観察し、鶏との会話の延長線上に理想の卵があると思っています。道半ばではありますが、おいしい卵をお届けできるよう日々精進していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
1994年生まれ。東京都府中市出身。20歳の時に旅したインドで鶏に関心を持ち、大学卒業後、北海道生活に浸りながら養鶏業に携わる。都内の実家で10ヶ月間、鶏(雄雌)との共同生活を経て、2022年2月に株式会社耕すに入社。現在も鶏に取り憑かれながら、循環をテーマにした美味しい卵をお客様にお届けできるよう、日々研究中。